とある知り合いのガイドさんが、東京で日本庭園に連れて行って欲しいと訪日外国人から突然リクエストされた際に、お連れしたのが清澄庭園と聞いて興味を持ちました。よく参照している「見たい、知りたい、日本の庭園」によると、元々は江戸時代、元禄の頃の豪商・紀伊國屋文左衛門の別邸だと伝わっているそうです。
その後、明治になって三菱グループの創始者である岩崎弥太郎氏が、賓客の接待や社員の慰労施設を造るために周囲の土地とともに買い上げて、整備をされたそうです。ここにある磯渡りの石の配置は、弥太郎氏みずから決めたとも言われています。無鄰菴を作った山縣有朋といい、江戸から明治にかけて活躍された方々は、庭への関心が高かったのですね。
私も東京出張の際に、暇な時間を見つけて見学してきました。回遊式庭園ですので、歩いて回って様々な角度から見ないと良さがわからないので、暑い日差しが照りつける中でしたが、ゆったりと池の周りを回遊してきました。周りに高すぎるビルが映り込まないためか、興醒めすることなく、楽しむことができます。
庭園内には鶴島、松島、中島などの浮島や、築山など美しい景観がありますが、ここで目についてのは、様々な石が配置されていることです。中には、現在採掘できない貴重な石もあったようです。人間の嗜好は、最後は石に向かうと聞いたことがありますが、石庭で有名な京都の龍安寺も、池の周りにたくさんの大きな石が配置されて、それぞれの色や形を楽しめたことを思い出しました。
東京には大名庭園の名残もいくつかあり、まさに都会のオアシスで、喧騒やビジネスで疲れた身体と心を癒せる場所が残っています。行かないともったないですね。(終)森田達也